プロジェクトから撤退できない日本人 「徹底抗戦」VS「合理的決断」

商業版徹底抗戦「コンコルドの錯誤」
オリンピック中止できないのも同根

 超音速旅客機「コンコルド」は1963年から2003年まで40年間運用された。戦後まもなくイギリスとフランスによって共同開発され、マッハ2.0で高度2万mを飛行し、ロンドン─ニューヨーク間を通常のジェット旅客機の半分ほどの3時間半で飛行できる。

 しかし、チケット代200万円が妥当かと言えば、機内は狭く、音速に達する際の騒音や衝撃により乗り心地が悪い。乗客数は100名で燃費も悪く、商業的な採算が取れないことは当初から認識されていて、当然のように事業は赤字続きだった。

 にもかかわらず40年間も運用されたのは商業版徹底抗戦の典型例と言ってよい。合理的判断を排除した一番の理由は、アメリカ航空界に対抗しようとする英仏両国の面子と莫大な投資がかかっていたからである。かくして、初めから成功しないと分かっていても国の面子や建前などから巨大プロジェクトを中止できなくなることは「コンコルドの錯誤」と呼ばれている。

 一般に大きなプロジェクトほど利害関係者が多く、資金も投じられているので途中で止めるのは難しい。しかし大規模プロジェクトだからといって錯誤を犯さないわけではない。そのような場合に合理的判断を無視して徹底抗戦に突入しがちだ。特に日本でそうしたケースが多い。

 思い起こすのが新型コロナ禍の中、開催され終了した東京五輪である。いまさらオリンピック中止論を持ち出すのはまさに「後の祭り」だが、開催前は「中止、延期すべきだ」とする意見が圧倒的に多かった。開催後「やはり、やってよかった」と思った人もいるが、いまでも開催すべきでなかったという人は少なくないはずだ。

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