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パブリック企業になりたい。同族経営の将来像をどう描くか エステーの交代劇は他山の石と見られるだろう


10年ぶりの社長交代を発表すると同時に
異例の「脱・創業家」経営を宣言

 ニッポンに「失われた30年」をもたらした要因の1つに、世襲の横行による社会階級の固定化を指摘する識者は多い。親から門閥や財力を譲り受けることが“勝ち組”と呼ばれる半面、いわゆる「たたき上げ」と呼ばれる人たちが大きく減った。最たる例は政治の世界であろう。

 戦後の昭和時代に総理の座を射止めた13人のうち、父親も政治家であったのは鳩山一郎1人であった。これに対して平成~令和の世で総理となった18人は、岸田文雄を含む12人が世襲政治家だった。その率、実に6割。自民党全体でも既に4割の議員が世襲だという。公職選挙を勝ち抜くのに欠かせない地盤、看板、鞄の「三バン」を親から継承できるメリットが、やはり大きいのだろう。

 世襲議員は選挙基盤が相対的に強固なため、地元対策に労力を割く必要が少なく、その分、政策の勉強や視察、海外出張などに時間を回す余裕があるなどと、利点を説く向きも皆無ではない。だが、公文書を書き換えさせたり、素人の倅を総理秘書官に登用したりといった世襲総理の酷い有り様を目の当たりにさせられると、説得力は薄いと感ぜざるを得ない。

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