第12 回 「僕のワンダフル・ライフ」

初めて本誌編集長に泣かされた日
犬なんて触るのも怖いのに甘噛みだなんて

 私は傘寿を過ぎてなお雑文の類を書き続けている。これはひとえに2人の知人の尽力のお蔭である。1人は国際紙パルプ商事の田辺円会長、もう1人が本誌編集長である。執筆業は、43年に及ぶサラリーマン人生をリタイアした私の夢の1つだった。人間は表現する動物だとラスキンは言った。ならば文筆を生業としてみたい。ところが、執筆依頼は一向に来ない。田辺会長にそのことを伝えたら、即、広報誌に雑文の連載が決まった。なるべく紙に関係したテーマをと言われ、長いサラリーマン人生で頂戴した手紙を材料に発信者のプロフィールとエピソードを紹介するのはいかがと提案したら、その場で決まった。もう6年以上前のことになる。

 本誌編集長に初めて会ったのも、3年以上前になる。知人の紹介で日比谷の日本記者クラブで、昼間からビールを飲みながら品定めを受けた。何が書きたいの、と問われて「日本オーナーシェフ列伝」か「定年後の生き方」など適当に答えたら、じゃあ「定年後ね」と即決。その後、ほぼ1年毎にテーマを変えながら連載は続いている。余分な指示は受けたことはなかった。きっと牙を磨いていたに違いない。「甘噛みですよ」と言いながら2本の映画を紹介され原稿を書く羽目に陥った。

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