プライバシーは幻想? 初期のデジタルの夢とは 逆の方向に進んだ“監視資本主義”

情報の民主化を巻き起こし経済成長を促す
その一方で不安・不信はますます増幅する

 インターネット黎明期の1991年、米国の教師で平和活動家、ジョディ・ウィリアムズは、「地雷禁止国際キャンペーン(ICBL)」を始めた。強力な味方になったのはEメールだ。6年かけて約60カ国に約1000のNGOを組織化、対人地雷禁止条約実現の原動力となった。その活動が評価され、97年にノーベル平和賞を受賞したウィリアムズは、「Eメールは、私たちが対人地雷禁止キャンペーンを発展させるのに強力なツールになりました。コミュニケーションを仲介し、何よりも安価だった」と振り返っている。電話と紙の手紙だけでは成しえなかった偉業だ。こうした成功を目にした人々は、ネットがもたらす未来に期待と希望を寄せた。

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