時価総額はファーストリテイリングより上 誰もうまく説明できないリクルートHD

🔹戦後最大の企業贈収賄事件から復活
「創業者」故・江副浩正氏なしには語れない

 「名前は知っているが、何をしているのかよく分からない会社」。そう言われる企業が昔からある。重厚長大のモノづくりを産業振興の基軸としてきた戦後のニッポンにおいて、この範疇から外れる会社は押し並べて、「分からない」というレッテルを貼られてきた。リース業の嚆矢となったオリックスや、商用インターネットサービスの世界を開拓したヤフージャパンなどが代表格か。

 ただ、昭和、平成、令和の3代にわたって「よく分からない」と言われる企業の筆頭格と言えばリクルートホールディング(HD)だろう。学生と企業を結ぶ求人広告の代理店業から始まり、人材ビジネスを柱に各種情報メディア、一時は不動産業にも手を染めた。戦後最大の企業贈収賄事件とされる「リクルート事件」で存亡の危機に立たされるも、ダイエーの支援を受けて立ち直り、2014年には株式上場まで果たすなど、経歴も尋常でない。

 足元の時価総額はおよそ9兆3000億円と、ファーストリテイリングや任天堂さえも上回る。でありながら、リクルートが高収益を上げられる理由を、自信をもって説明できる人間は証券アナリストや同社のステークホルダーを除けば少ないときている。

 就職情報を扱う「リクナビ」、旅行情報の「じゃらん」、不動産情報を手掛ける「スーモ」、結婚情報に特化した「ゼクシィ」といった情報メディアのブランド名は広く知られていても、消費者に社名を強く訴求せず、同種のビジネスモデルを持つ会社が他にないことも影響していよう。その一方で、「体育会系のキツイ営業が売り」「会社を辞めた人たちの方が偉くなる」「創業50余年で定年退職者はわずか6名しかいない」といった都市伝説は絶えず流布する。人は自らの、あるいは属する集団の常識の範疇を超えるものに接すると、必要に迫られない限り、理解しようとしないものだが、リクルートにまつわる評判も、こうした面があることは否定できない。

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