何もない過疎の山村が挑戦する 山梨県小菅村の「高級旅館」で村おこし

知名度も低く名所旧跡もなく過疎化も進む
そんな村に無謀な計画を立てたのは村長

 山梨県の中山間地にある小菅村と聞いてピンとくる人はいるだろうか?山梨県とはいえ、公共交通機関はJR東日本の青梅線奥多摩駅からの路線バスしかなかった時期もあり、生活面では東京都との結びつきの方が強い。村内には東京都水道局の水源林もある。東京都との関係が深いとはいえ、過疎に悩む山村であることには変わりない。人口はピーク時の1955年ですら2244人に過ぎなかったが、現在ではおよそ700人と3分の1にまで減少している。そんな小菅村がユニークな地域おこしで成果をあげ、全国から注目されているというのだ。

 関東の代表的な河川である多摩川と相模川の源流が同じ村にあることは、意外と知られていない。実はその村こそが小菅村だ。水源地として豊かな自然に恵まれた村だが、名所旧跡が乏しく観光地としての魅力に乏しい。そんな小菅村に「観光で村おこしをしよう」という、無謀なプロジェクトが立ち上がった。決断したのは小菅村長の舩木直美だった。舩木は地元で養蚕や炭焼き、ワサビ栽培などを営む農家に生まれ、1977年4月に小菅村役場に採用される。

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