めざとい人たちの視線は宇宙を向いている!?衛星電話VS地上基地局電話

遊覧船になかった衛星電話
日本では非常時専用だが

 4月の知床遊覧船の事故では安全対策の不備が後になってから次々と判明した。事故を起こした船の衛星携帯電話は故障しており、通信手段として衛星電話ではない通常の携帯電話に変更されていたとされている。

 今日では電話といえば携帯電話、それもガラケーでなくスマホのことである。日本における携帯電話の総契約数は2022年3月時点で、1億9500万件を超えている。人口1人当たり2台弱という計算である。

 ただ、携帯電話は基地局から離れていると電波が届かないことがある。例えば冬山で遭難して携帯を持っていても山奥では電波が届かないこともある。地上中継局がカバーする地域は半径数キロ程度である。また、大きな震災ともなれば携帯は中継局のダウンや通話殺到でほとんどつながらない。

 ところが同じ携帯でも衛星携帯電話(略して衛星電話とも言う)は、そんな時でもつながる。日本ではまだなじみの薄い電話であるが、冬山でも、そして今回の知床遊覧船でも衛星電話ならつながっていたはずである。実際、船舶の通信はほとんどが衛星電話である。

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