脱炭素社会とエネルギー戦略 自前の開発力、整合性なき政策では日本は終わる

🔻具体性薄い日本の戦略

 4月22日、菅義偉首相は2030年度の温室効果ガスの新たな削減目標について、「2013年比で46%削減する」との方針を表明した。従来の26%削減方針から大幅に引き上げた。菅首相は「さらに50%の高みに向けて挑戦を続けていく」と述べた。そして脱炭素に向けた研究開発を支援する「2兆円の基金」を創った。これで「自動車から排出される二酸化炭素(CO2)ゼロを目指し、電気自動車(EV)の拡大を促進する」とも表明した。

 2018年現在のCO2排出量は、中国95.3億トン、米国49.2億トン、EU28.0億トン、日本10.8億トン。また2030年の削減目標は、中国65%(2005年比)、米国50~52%(2005年比)、EU55%(1990年比)、日本は46%(2013年比)である。削減率の比較年次からすると日本は大変な削減をコミットしたことになる。

 米国のバイデン大統領が「50%削減」と言ったので、菅首相はそれにつられてしてしまったのだろうか。「46%の根拠は何ですか」と問われた小泉進次郎環境は「何となくフアッと46%の数字が浮かんだ」と答えた。どうも真面目に仕事をしていないようだ。

 バイデン政権は4月19日に電気自動車(EV)の普及に向けて約19兆円の予算を計上し、さらにEV購入に対する補助金や税制優遇を設け、2030年までに充電設備を全米50万カ所に整えるという。そして4年間で2兆ドル(約208兆円)を環境インフラに投じる。ブリンケン国務長官は「アメリカは再生エネルギーで中国に後れをとっている」と、ここでも中国に対する警戒感を隠そうとしない。フランスも経済対策として2年間で1000億ユーロ(約12兆円6000億円)、英国も2030年までに洋上風力発電など10分野に120億ポンド(約1兆6000億円)を投じるという。

 ただ、中国の最新の5カ年計画では、「一帯一路プロジェクト」中で240以上の火力発電を建設しようとしている。CO2の排出量はさらに増加する。中国は、先進国がこれまで火力発電で長い間CO2を出してきたので、“後進国”の中国はもう少し火力発電を使わせてもらうという論理だ。

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