もうこの人には任せられない 国民の生命を犠牲にした東京五輪 失態続き、政権末期の風景が広がる

制御不能の災害レベルの感染爆発
心ここにあらずを露呈した失態

 新型コロナウイルスのパンデミックで1年延期、それが収束しないまま緊急事態宣言発令下の無観客開催、そして世界各国の選手や関係者に厳しい検査と隔離を課すという異例ずくめだった東京五輪。日本勢のメダルラッシュに瞬間的に沸いたものの、終わってみれば、インド由来のデルタ株の猛威を振るい、「制御不能の災害レベル」の感染爆発と医療崩壊という冷酷な現実が待ち構えていた。

 五輪と感染急増に直接的な因果関係があるとは言えないまでも、菅義偉首相が繰り返してきた「安全・安心な大会」が揺らいだのは紛れもない事実。五輪期間中に緊急事態宣言やまん延防止等重点措置の適用地域を追加せざるを得なかったのは、先見性を欠いた失政だ。対策は後手に回り大混乱、協力が不可欠な国民と対話する意思も言語力も決定的に欠落したことで、感染拡大に歯止めをかけられず、統治能力喪失は目を覆わんばかり。

 メディアの世論調査の内閣支持率も発足以来最低水準に落ち込み、危険水域とされる20%台に。五輪の熱狂の余韻を追い風に、秋の政治決戦に突入する目算はあっけなく崩れた。広がったのは政権末期の風景だ。

 「開催が1年延期され、さまざまな制約の下での大会となったが、開催国としての責任を果たせて、無事終えることができた。国民の理解、協力に感謝したい。選手の皆さんが大活躍し、素晴らしい大会になった。スポーツから感動をもらった」。五輪閉幕後の8月9日、長崎原爆犠牲者慰霊平和祈念式典に参列後の記者会見。菅首相は五輪の成果をこうアピールしてみせたが、表情は硬かった。1日当たりの全国の新規感染者が1万人を遥かに超えたコロナの現状、そして直前の2つの失態が重なっていたからだ。

 それは信じがたい痛恨事だった。6日の広島市原爆死没者慰霊式並びに平和祈念式のあいさつで、「我が国は、核兵器の非人道性をどの国よりもよく理解する唯一の戦争被爆国であり、『核兵器のない世界』の実現に向けた努力を積み重ねていくことが重要」などとした肝心な部分を読み飛ばしてしまった。

 それに止まらない。その3日後の長崎の原爆慰霊式典では遅刻し、開始時間に着席できなかった。「『心ここにあらず』を証明している」(立憲民主党中堅)と批判を浴びても仕方あるまい。

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