俳句の遊歩道(`21/11)

野仏の眼差しまろし冬日和 瀧美千江

 歳時記に「冬日和」は「冬の晴天。風があると寒いが、なければ、うららかな好天となる」とある。つまり「冬うらら金太郎飴と知恵の輪と 渡辺のぶ子」とあるように寒さも小休止。つい郊外への小さな旅ということで、陽も風もやさしければ心も解放される道理で野仏の眼差しも心なしか「まろく」拝されたという。木喰仏や円空仏といかなくとも、風雪に耐えて来た野の仏には、つい手を差しのべたくなる可憐さがあるものだ。作者は「眼差しまろし」と受けとめ「一日一生」の充実を味わったという。

 別に「シヤム猫の遠出して来る冬日和 宇野笑子」がある。

ここから先は

607字
この記事のみ ¥ 200