コロナ、脱炭素化、SDGsがもたらす社会変化 ―水素社会への転換(下)

世界的潮流になった脱炭素化
温暖化が世界中の生活を脅かす

 気候変動危機を前に、脱炭素化が世界的潮流となった。日本経済は否応なく構造変革を迫られる。菅義偉首相は昨年10月、2050年までに温暖化ガスの排出を実質ゼロとする「カーボンニュートラル」を宣言。今年1月にはバイデン米大統領が、地球温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」への復帰を表明。先頭を行く欧州連合(EU)と合わせ、日欧米は脱炭素社会へ一気に足並みを揃えた。

 菅首相の脱炭素宣言を受け、経済産業省は昨年12月、「グリーン成長戦略目標」を発表。「2030年代半ばまでに電動車への全面転換」、「水素エネルギーの利用拡大」を掲げ、取り組みの道筋を示した。なぜ、脱炭素化なのか。それは、炭素が地球温暖化をもたらし、いまや世界中の市民の生活を脅かしているからだ。地球温暖化は豪雨や熱波と化して襲来する。

 この夏、世界で頻発したのは森林火災だ。米西部、カナダ、ブラジル、欧州、北アフリカなど各地で40度を超える熱波と空気の乾燥がもたらした。米カリフォルニア州では森林火災が多かった前年の2.5倍に。米当局によると、8月半ば時点で米国の100以上の大規模森林火災が発生している。

 日本では温暖化の影響は、豪雨となって現れた。東京五輪直後に続いた西日本各地での大雨被害。停滞する前線が「これまで経験のないような大雨」をもたらした。ドイツやベルギーを7月に襲い250人超が死亡した7月の大洪水も、温暖化の影響とされる。ライン川流域の洪水リスクは事前に警告されたが、住民がよもや深刻な事態になるとは思わずに油断して被害を広げた。

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