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【VHSって覚えていますよね】死屍累々、消えたAV産業、変身に七転八倒「名門復活」へ賭けるJVCケンウッドの現在地

ハイテク国家ニッポンの立役者だった
当時の大手御三家の顛末はいかにも寂しい

 1980年代に半導体メモリーとともに世界市場を席捲した日本の家電・AV(オーディオビジュアル)産業。ハイテク国家ニッポンの立役者として、その中でも、ソニーの「ウォークマン」と並んで日本ビクター(現、JVCケンウッド)が初めて実用化したVHS(ビデオホームシステム)は、多くの消費者の心を魅了した。フランス政府がVHSデッキの洪水的な国内流入を防ぐため、国際通関業務をフランス西部の内陸都市・ポワティエに限定した極めて異例な貿易摩擦対応を、現代版「トゥール・ポワティエ間の戦い」だとメディアがたとえたことも、今日のAV産業の「衰退」を前にすると、俄かには信じ難いほど昔の話となった感がある。

 生き馬の目を抜く国際競争とは、しばし使われる言葉である。しかし、実は敗者となった企業の多くも、どうにか業態転換を成し遂げて、生き延びているというケースは思いのほか多い。昭和初期に外貨獲得の先兵として最盛期を迎えた○○紡といった名称を冠する紡績業などは、その典型だろう。

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