大型対策に経済学の巨頭たちが真二つ パウエル、イエレンの言い分。対中政策も

200兆円の大型対策に気迷う米金融市場
長期金利の急騰をもたらしたのは何か

 3月11日、新型コロナ克服とそれに付随する経済立て直しを狙うジョー・バイデン米大統領(民主党)の1.9兆ドル(約200兆円)に上る大型対策が成立した。大統領就任前から着々と構想を温め、就任宣誓式から間髪入れずに発表。国民に1人当たり最大1400ドル(15万円)の追加給付を柱とし、拡大失業手当手の継続や企業支援、社会インフラの再整備など米国の「build back better=よりよい再建」を目指す意欲的な対策だ。巨額な財政支出に眉を顰める野党・共和党の反対を押し切って議会通過させたことに英BBCはバイデンの「大勝利」と評するなど欧米メディアはほぼ好意的な評価を下している。ポスト・トランプの民主党政権の着実な歩みを印象付けた。

 ただ、この大型対策を手放しで喜んでいいのか、気迷いしているのが、米国の金融市場だ。ダウ工業株30種平均は成立が確実となった3月10日こそ3万2300ドル弱の史上最高値を更新したものの、対策の成立が視野に入ってきた2月24日に、その時点の史上最高値の3万2000ドルを突破したかと思えば、3日後の27日までには1000ドル超下げ、3月に入ってもこの1000ドルの幅で乱高下を続けこのレンジから抜け出せなかった。

 また、今年はドル安進行が必至とみられていた為替相場も2月下旬からドル高が加速、3月半ば時点で1ドル=109円を突破する展開となり、年初の102円半ばから6円強上昇した。さらに長期金利の指標である米国10年債利回りも急騰を続け、年初の0.9%から3月に入り1.6%に達しこの近辺で推移している。2018年初頭以来の上昇率という。この市場乱高下は、長期金利の急騰によって惹き起こされたのは間違いない。金利が上昇すれば国内の投資マネーは株式市場から債券市場へシフト、株価の騰勢は弱まる。

 また、外国為替市場では国際的投資マネーが低金利の円やユーロから、高金利通貨となったドルへ流れるのは必定でドル高となる。そして長期金利の急騰が続けば、コロナ禍で大打撃を受けた米国経済は、バイデン政権がいかに大規模な経済対策を打とうと、回復の足取りは鈍ることになる。

 この長期金利の急騰をもたらしたのは一体何か。実はこの大型コロナ経済対策に関するある人物の意外な分析だ。ワシントン・ポストに掲載された「主張―賞賛すべきバイデン刺激策、が、多大なリスクも(Opinion: The
Biden stimulus is admirably ambitious. But it brings some big risks, too)」(2月5日付)がそれ。筆者はビル・クリントン政権下で財務長官、退任後はハーバード大学学長も務めたローレンス・サマーズだ。民主党で長年経済政策に関する指南役を務めている。

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