コロナが燻りだす日本の政治 苛烈な弱い者いじめ、国民は安心してはいられない 政治も行政も「総モラルハザード現象」

コロナ失政を認めたくはない
狂った「有観客」の青写真

 菅義偉首相が「新型コロナウイルスに打ち勝った証しにする」とする東京五輪は、4度目の緊急事態宣言の発令という最悪の状況下で開幕を迎えた。ごく一部の競技を除き無観客での開催。有観客に最後までこだわった菅政権にとって完全な敗北となった。

 頼みのワクチン接種大作戦も、ここに来て供給不足が露呈し、地方自治体分も、職域分も急失速。地方自治体からは「はしごを外された」と怒りの声が上がる。緊急事態下の対策では、酒類を提供する飲食店を規制するため、金融機関に飲食店への働き掛けを要請、酒の販売業者にも取引停止を促す通知を出したものの、関係団体や与野党の猛反発を招き、撤回。混乱と迷走が止まらない。

 内閣支持率も再び下落。4月の衆参両院の3補選・再選挙の全敗に続き、与野党対決となった静岡県知事選にも完敗、東京都議選も事実上の敗北を喫し、秋に持ち越された最大の決戦、衆院解散・総選挙へ「菅首相で選挙を戦えるのか」と、不安が膨らむ。

 「私自身は、かねてより、安全・安心な大会を実現するのが政府の責務だということを申し上げてきた。緊急事態宣言を発した場合は無観客も辞さないことも発言してきた。政府としては、水際対策を始め、安全・安心のために全力で取り組んでいきたい」

 7月9日、日本政府、東京都、大会組織委員会、国際オリンピック委員会(IOC)、国際パラリンピック委員会(IPC)による5者協議が、1都3県で行う競技を無観客で実施することを決めたのを受け、菅首相は語った。

 それまでは、政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会の尾身茂会長ら専門家有志が「無観客が望ましい」と提言したのを振り切り、「有観客」に固執してきた。3度目の緊急事態宣言を6月20日に解除し、まん延防止等重点措置の適用に移行したのも、五輪観客問題を最終判断するタイムリミットを逆算した「有観客ありき」からだった。ワクチン接種を進め、重点措置を続けることで新規感染者をじわじわと減らせば、観客を入れた開催も可能と青写真を描いた。コロナ失政の証左となる無観客はどうしても回避したかったのだ。

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