NATO諸国へ戦火拡大のリスク核使用回避へ問われる米国の出方

何がきっかけで核戦争になるか分からない
危機のスパイラルは自己実現的に起こる

 ロシアによるウクライナへの侵攻は凄惨な戦争と化した。停戦交渉も隔たりは大きく、根本的な進展はない。ウクライナが即時戦闘停止、ロシア軍撤退を要求する一方、ロシアはウクライナの非武装化や中立化、ロシアが併合したクリミア半島での主権承認、さらにはウクライナ東部のドネツク州とルガンスク州全域での親ロ派の主権承認を要求している。ウクライナが降伏してロシアの傀儡政権ができるのか、戦争が長期化するのか、不透明だ。

 バイデン大統領は3月1日の一般教書演説で真っ先に、ウクライナ支持を全米に呼びかけた。「ロシアの独裁者は世界中で代償を払うことになる」と語り、強力な経済制裁やウクライナに対する軍事・経済・人道的支援について説明した。同11日の記者会見では「ウクライナでロシアと戦うことはない。第3次世界大戦は何としても避けなければならない」と軍事介入への慎重姿勢を改めて強調した。プーチン大統領は、米国や他のNATO(北大西洋条約機構)加盟国が戦争に介入すれば核兵器を使用する用意があることを繰り返し示唆し、ウクライナの一部原発も占拠した。

 「米国は戦闘が今後さらにエスカレートするリスクを警戒し、機会を捉えて戦闘を終わらせる方法を見いだす努力をすべきだ」と説くのが、フォーリン・アフェアーズの「ウクライナ戦争はどのように悪化に向かうか(How the War in Ukraine Could Get Much Worse)」(3月8日付)である。

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