より高く飛べるように結んだ従業員との約束 メイド・イン・ジャパンを追求する資生堂

「TSUBAKI」や「ウーノ」も非コア事業
剥がれた「厚化粧」、鏡に映る素の姿

 現役の映画監督としては最長老の1人となった山田洋次監督の初期のヒット作品に『下町の太陽』(1963年)がある。後に代表作となる『男はつらいよ』シリーズで主演・渥美清の妹さくら役として、人気を不動のものにする倍賞千恵子の実質的なメジャーデビュー作として知られる。高度成長期に差し掛かった下町の石鹸工場を舞台に、そこで働く若いヒロインの恋と青春模様が当時の東京の風景をバックに描かれた佳作だ。

 撮影は、東京・曳舟に実在した資生堂東京工場で行われた。当時の墨田区には水の利を求めて花王、ライオン、鐘紡(現クラシエ)、玉の肌石鹸など大小の石鹸工場が林立していたが、都市再開発や環境配慮の流れから徐々に郊外に移転していった。資生堂東京工場も1983年に久喜工場(埼玉県)が竣工したのに合わせて閉鎖され、現在はショッピングセンターや区民ホールへと姿を変えている。

 と、ここまではよくある国内生産拠点の再編劇である。ところが資生堂は、この久喜工場についてもこのほど、石鹸を含めたトイレタリー事業ごと英投資ファンドのCVC キャピタル・パートナーズの子会社へ売却すると発表し、関係者を驚かせた。

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