テレワークVS会社勤務 「痛勤」をなくす処方箋

家畜以下の通勤ラッシュ
在宅勤務は普及しなかった

 筆者の中原は一時期、埼京線を利用していたことがある。ラッシュで知られた路線である。その頃、留学先のセントルイスのワシントン大学の教授が来日し、有名な日本の通勤ラッシュを体験してみたいということになった。
満員ラッシュを体験した教授の「アメリカでは家畜でもあんな運ばれ方はしないよ」という言葉を、いまでも覚えている。

 そんな過酷な通勤を日本人は「会社に勤めれば当たり前のもの」として耐えていた。それが新型コロナの影響で変わってきている。

 年初に広告会社の電通が本社ビル売却を発表した。広告収入が低迷する一方で、本社ビル勤務者約9000人の出社率は最近では2割程度なので余剰スペースが生じているからだ。確かに、社員のテレワークが定着すれば、都心に大きなオフィスを構える必要性は薄れ、オフィス売却や縮小の動きが企業で広がることだろう。

 ただ、リモートワークやテレワーク自体はコロナ以前の数十年前から既にあった。あるいは、別の言葉で実行されていた。例えば「在宅勤務」「サテライトオフィス」などである。インターネットが普及し始めた頃、「SOHO (Small Office/Home Office)」という言葉も使われていた。

 サテライトオフィスは駅前など便利な場所にある出先オフィスである。SOHOは起業家たち向け小オフィスだが、仕組みのカギはネットを使ったリモートワーク、テレワークにあった。

 因みにリモートワークとテレワークの違いは、狭い意味ではリモートワークは企業の従業員が社外で作業する労働形態、一方、テレワークはIT活用で場所や時間にとらわれない柔軟な働き方をする形態。テレワークは企業の従業員だけではなく、個人事業主やフリーランスも対象とするより広い意味だ。もっとも、通常はほぼ同じ意味で使われる。

 テレワークには以前から国が資金も投入して、新しい形態のオフィス需要喚起に、ベンチャー企業育成、中小企業活性化、空きが多い地方の工業団地の新しい使い方、中心市街地活性化としての空き店舗活用などもからめて、補助金や助成制度を数十年前からあの手、この手で繰り出した。

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