元特捜検事の複眼(`21/9)

国賠訴訟で敗訴した国側の上訴対応、
その要否・当否を左右する政治的判断
時期を失すれば被害者救済の名目は色褪せ、
法的安定阻害が高まるリスク

 小泉劇場の幕開けはハンセン病訴訟の控訴断念。控訴審は一審の延長としての事実審。「和解」に似て、法的安定性と具体的妥当性の観点から政治的判断に親しむ。今回の黒い雨訴訟で政治的判断と喧伝された上告断念は、二審判決に被爆者援護法の対象地域の踏出し感があるとしても、上告理由は見当たらず。総理談話としては、上告断念に触れず、「更なる法整備に努め、原告以外の被爆者の救済にも当たる」に止めた方がスマートだったのでは?

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