第11回 50回目のファースト・キス

彼女は次の日には全てを忘れてしまう
それを知っても彼は何故、恋に落ちたのか

 私は高齢のためどうしてもテーマが古くなりがちだ。本誌編集長からもときどき遠回しに注意を受ける。彼だって4月には前期高齢入りなのに。それなら現代の恋愛映画でも当たってみるかと若者に相談したら、数年前にヒットした「50回目のファースト・キス」という映画を紹介された。

 物語は単純だ。舞台はハワイ。水族館で獣医として働くヘンリー(アダム・サンドラー)の夢は北洋探索。ある日、カフェで金髪の美女ルーシー(ドリュー・バリモア)に出会って一目ぼれ、恋に落ちる。彼女は、隣のテーブルに1人で座り、本を読みながら皿の上のワッフルでお菓子の家を作っていた。ヘンリーは、家のドアの蝶番に爪楊枝を使ったらとアドバイスし、それがきっかけで2人は友だちになる。でも、次に顔を合わせたとき、ルーシーはヘンリーのことを全く覚えていない。

 1年前、父親の誕生日の朝、パイナップルを収穫に向かう途中、道路を横切る牛を避けようと父親が急ハンドルを切ったせいで、ルーシーは頭を打ち、短期記憶喪失障害になり、事故以降の記憶は翌日になると消えてしまう。

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