俳句の遊歩道(`21/7)

鐘撞いて僧が傘さす送り梅雨
森 澄雄

 「送り梅雨」は、梅雨が明けるころの大雨や集中豪雨をいう。掲句、参詣中の寺で折からの雨に遭遇した体験を詠んだのであろうが、寺僧を捉えて季語「送り梅雨」をうまく活かしている。つまり、じめじめと続く梅雨の日々、それは庫裡から鐘撞き堂までの往来を傘さす暮らしであるのだが、それもそろそろ終わるのだろう。眼前の降りようでは梅雨も明けそうだし、僧の傘を扱う動作もきりっと清々しく、これはひょっとして、僧がいま梅雨に引導を渡したのではないのか、と作者は自らの機知に頷いているのだ。

 別に「梅雨に倦き机に倦きて部屋歩く 吉屋信子」がある。

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