供給ショックには無力、利上げに進むFBRの悩み まさかトランプが戻ってくる?共和党は正常か?

サマーズらの勧告に全面的屈服したFRB
2023年までに2回の利上げが大勢意見に

 この春からの米国のインフレ動向とそれに応じた金融政策の在り方を巡る一大論争は、どうやら米連邦準備制度理事会(FRB)側の「敗北」だったようだ。今年に入ってからの急激な物価上昇は一時的なもので、FRBは当初現行の超緩和策から引き締めに転じるのは「2024年以降」としていた。これに対し、ローレンス・サマーズ元財務長官やオリビエ・ブランシャール元国際通貨基金(IMF)チーフエコノミストら、現場の経済金融政策にも理論にも通じる重鎮が、金融超緩和下での第二次世界大戦直後に匹敵する大型財政刺激策の実施は「ここ40~50年経験していないようなインフレ圧力の引き金を引く可能性は十分ある」(サマーズ)として、事実上FRBに予定より早めの引き締め転換を要請、金融市場や政界、学会で広く注目の的となっていた。

 現実問題として、食品・エネルギーを除くコア消費者物価指数は、前年比で5月に3.8%、6月に4.5%と、30年ぶりの急騰となった。個別品目を見ると中古車価格はこの2カ月で18%も上昇してインフレ率を0.5㌽引き上げた。中古住宅価格も米不動産協会が6月下旬に発表した調査で、初めて35万ドルを超え、前年同期比23.6%も跳ね上がった。

 こうした状況を受け、インフレ目標を2 %に置くFRBも政策見通しの修正をせざる得なくなり、6月15、16日の政策会合では会合参加者18人のうち7人が2022年に利上げを始め、2023年までに2回の利上げが大勢意見となり3カ月前の見通しを大幅に前倒しした。また、ゼロ金利と並ぶ超緩和策の柱である国債・住宅ローン担保証券(MBS)の購入額を現在の1カ月当たり1200億ドル(約13兆円)から減額する「時期が近付いている」(同会合議事要旨)と一致、「適切ならば資産購入ペースを落とす態勢をよく整えておくことが重
要」(同)との認識を共有した。要するにサマーズらの勧告に全面的に「屈服」した形だ。

 ジェローム・パウエルFRB議長が就任以来の正念場を迎えていると指摘するのが、ウォール・ストリート・ジャーナル紙の「FRBの2大使命、インフレも雇用も未達リスク高まる(Risks Rise to Both the Fed’s Inflation and Employment Goals)」(6月21日付) だ。FRBのみならず、多くの民間エコノミストも今回の経済回復局面は、一時的な供給不足が物価を押し上げているものの、メーカーが生産を拡大できるようになれば物価高はほどなく終息すると見ていた。

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