EV材料で注目の酸化グラフェンユーザーのニーズに合った物性を提供─仁科マテリアル─

導電性などに優れたナノ素材
形成メカニズムを解明

 ナノ素材の中で話題になることが多いグラフェンはシート状のカーボン材料だ。自然界に存在する炭素の結晶である黒鉛(グラファイト)から1層だけ剥ぎ取ることによって薄い膜状グラフェンを初めて作成した2人の科学者は2010年のノーベル物理学賞を受賞している。

 非常に薄くて透明なグラフェンは素材として優れた特性を持つ。電気や熱をよく伝え、導電率や熱伝導率は銅の10倍ほどとされる。電極材などに利用されるほか、基板に直接成膜できるため工業利用の可能性が世界中の関連メーカーから期待されている。

 グラフェンは30年には1000億円の市場規模が見込まれ、ナノカーボンの中で最も伸びが大きいと期待されている素材である。だが一方でグラフェンは炭素が原子1個分の厚さで結合した薄膜であり、量産が難しい。

 電気伝導性、熱伝導性などといった特性を発揮できるような純度の高いグラフェンは簡単には作れず、高価だ。一般的な炭素素材である黒鉛は品質にもよるが1㌔1000円以下だが、グラフェンは桁違いに単価が高い。グラフェンを工業的に大量利用するためにはコストを引き下げる必要がある。

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