ワクチン争奪戦の中で 不思議なワクチン余り 原点回帰するオーストリアの コロナ対策

最大シェアを持つ英アストラゼネカ社製
欧州諸国の多くで65歳以上に接種制限

 コロナ禍の「救世主」か、それとも新たな「争いの種」か。そう、コロナワクチンのことだ。たび重なるロックダウンなどにより、欧州の市民も経済も、コロナ禍で疲弊し切っている。出口の見えないトンネルのような状態を一刻も早く克服するための切り札として、ワクチン接種が急ピッチで進められている。

 しかし、通常、約10年とも言われる開発期間を大幅に短縮して実用化されたワクチンの効果や副反応、接種に対する市民の不安はなかなか拭えない。同時に、激化する世界的な「ワクチン争奪戦」など課題は山積し、大陸欧州諸国でのワクチン接種は、依然として順調とはいえないのが実状だ。

 例えば、現在、最大シェアを持つ英国アストラゼネカ社のワクチンは、米国のファイザー社やモデルナ社製のワクチンよりも有効率が低く副反応も大きいという報告を受けて、ドイツやフランスなどでは使用を避ける動きが出ている。世界保健機関(WHO)や欧州医薬品庁(EMA)は、高齢者にもアストラ社製ワクチンは有効との見解を示しているが、欧州諸国の多くでは、65歳以上に対する接種を制限するなど、未だワクチンの有効性や安全性については手探りが続いている。

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