第22回 中里恒子『時雨の記』

初めて見かけたのは20年以前
肝心なのは、今を2人で生きること

菊地寛により「芥川賞」が創設されたのは昭和10年だが、
中里恒子は3年後の昭和13年に『乗合馬車』他の作品で
女性初の「芥川賞」を受賞した。

私が生まれた年のことで、
彼女は昭和62年78歳で亡くなっている。


代表作『時雨の記』は初老の男女の恋物語だ。

主人公は壬生孝之助という会社社長と、
彼より10歳年下の堀川多江。

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