俳句の遊歩道(`21/9)

颱風の不安ひたすら米を磨ぐ
平岩登代子

 広辞苑に、台風は「日本には年平均一一個が接近し、海難や風水害を起こす」とあるが近年、その被害の規模は大きくなるばかりである。人智が及ばないから天災なのだが、天災だからまあいいか、といかないのが辛い。掲句、台風の襲来に備えて思いつく手をつくしても不安は消えない。ただ目前のルーチンワークに集中するのみだというのだが、実は「米磨く」ことこそが風水害そのもので、蛇口に迸る水、糠で濁った洗米水の在り様、掌にザラつく米は土砂、土石流などリアル台風のイメージだというのだ。

 別に「庖丁を研ぎ台風を待ちゐたり 坐間游」がある。

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