経済動物VSアニマルウェルフェア 日本の卵は何故安い?世界潮流に背を向ける飼育法

巨大化した養鶏業🐓
1羽のスペースはB5判以下

 唐揚げブームだそうである。「おうちご飯」にピッタリだからであろう。それ以前から鶏肉は牛肉や豚肉よりもヘルシーだとして人気が上がっていたが、いまや肉の中でも最も注目を集める存在だという(図1)。

図1 鶏肉は人気1位になった画像1

 注目が集まると連鎖反応するのか、このところニワトリの話題が続いている。養鶏汚職などという事件もあった。元農林水産相が鶏卵生産大手アキタフーズから多額の現金を受け取ったとされる。その背景にあったのは、日本の養鶏業者のニワトリの飼育方法である。

 ニワトリは経済動物である。イヌ、ネコなどのペットとは異なり、経済的に、もしくは食糧として人間の役に立つように飼育や養殖される動物を経済動物という。産業動物ともいう。ウシ、ブタ、ニワトリが代表格である。

 一般には家畜とも呼ばれるが、ニワトリの場合は家禽ともいう。経済動物としてのニワトリは、目的を食肉用と鶏卵採取用に大別できる。そのうちの鶏卵の方に注目すると、ご承知のように鶏卵は「物価の優等生」とされている。

 何しろキロ当たりの卵の値段は昭和30年代から現在まであまり変わっていない(図2)。この間の物価の変動を勘案すると、今の卵価は当時の半額に過ぎない。ニワトリの飼料価格やニワトリの償却費から考えると、とんでもなく低い販売価格になっている。そのため、鶏卵大手業者は規模拡大でコストを下げて対応してきた。

図2 卵の値段は昭和からあまり変わらない(Lサイズ)画像2

 畜産は全体として規模拡大が進んでいるが、畜産の中では鶏卵は産出額が少なく、事業者数も少ない。鶏卵産出額は4848億円と農業産出額の5.4%に過ぎない(2018年、農水省調べ)。事業者の数は、他の畜産業と比べて圧倒的に少ない。

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