表面に出ない苦悩や葛藤は伝わりにくい 戦争体験の継承は整った知識よりも感性

体験の機微を伝えていくことは容易ではない
原爆について多くを語らなかった親

 年末は日米開戦(1941年12月8日)から80年という節目で、各メディアは特集に力を入れた。資料や証言をコンピューター解析して開戦前後の対米世論形成の過程を追跡したり、昨今の政治状況と80年前のそれとを引き比べたりした。それぞれに工夫と新たな掘り下げもあった。

 ただ、1つはっきりしたことがある。気がついたら、開戦時の当事者、あるいはその時代を大人として生きた人が周囲にほとんどいなくなっていたということだ。時を経れば当然の現実だが、一方で、文字通り昭和は遠くなったと思い知らされる。

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