俳句の遊歩道(`21/4)

囀(さえず)りをはるかに瀬音高まれり
信楽 操

 「囀り」は春の繁殖期に鳴く鳥の声をいう。雄が雌を誘うラブコールと縄張りを主張する場合とがあり、あたかも春の喜びを一斉に合唱するようで人々はなごむ。とはいうものの「囀の真ン中に居て淋しい日 守屋茂々子」と心の在り所が問題となる。その点作者には、聴く耳が備わっていたというべきか。心に聴く用意があって、初めに囀りを喜んでいた耳がいつしか身近かなせせらぎを捉え、その高鳴りを楽しんだという。まるでモーツァルトの小夜曲を聴くふうなのである。誰でも出来る技ではない。

 別に「囀りが好きで天まで行きし母 宮田喜代女」がある。

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