追随を許さない圧倒的な技術力とブランド力 またまだ秘密主義「稀代の上場会社」ファナック

今年、最初の「私の履歴書」に登場の驚き
売上規模は3分の1でも出藍の誉れの訳

 「日本経済新聞」の紙面上で60年以上に亘って続く名物連載の1つ「私の履歴書」。経済界を中心とした各界の著名人が出生から今に至る半生を、家族や友人のエピソード、仕事やプライベートの秘話など織り交ぜつつ振り返る自伝風の読み物として知られる。取り上げる人物によっては、同紙の編集委員クラスが数人がかりで事実上の代筆を行い、波乱万丈の物語に「仕立てている」のは、新聞業界内における公然の秘密となっている。

 その「私の履歴書」に、今年、最初に登場したのが稲葉善治・ファナック会長だった。同社が今年、設立50周年という節目に当たり、足元の業績も急速に回復に向かっているという背景から、新年の門出に相応しいと同紙の編集幹部は判断したのであろう。

 ファナックは「必要最低限の情報以外は開示しない」という独特の秘密主義を近年まで貫き、富士の裾野(山梨県忍野村)の海抜1000mの緑林の中に、同社のコーポレートカラーである黄色で壁を塗った本社や研究所、工場や厚生施設等を集約している。その姿から、国内でも指折りの“変わった上場企業”と見做されてきた。

 そんな会社が、経営情報のアカウンタビリティ(企業の説明責任)の必要性を声高に求めるメディアの人気コーナーに登場したものだから、同社を昔から知る人ほど驚いた。稲葉会長の思い出話は1月末まで続く予定だが、サプライズがどれだけ盛り込まれるか、同業他社に止まらず、株式市場の関係者も関心を寄せている。

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