津波で壊滅したコミュニティを農業で立て直す 仙台市若林区ReRootsの挑戦

災害危険区域に指定され見捨てられた地域
スイートポテトを通し興味を持って欲しい

 東日本大震災の発生から10年が過ぎた。被災地の復興でボランティアが大きな役割を果たしたのは言うまでもない。その多くは被災者の避難生活を支え、元の日常生活に戻すための取り組みだった。多くの被災者は大いに救われたが、地域の活力を元通りにするための「地場産業の立て直し」には課題が残った。

 「被災した産業の再建は、地元の企業や行政が行うべきもの」という考えが根強く、ボランティアが関わる分野ではないと見られているからだ。しかし、ボランティアが中心となって被災地の産業再建に成功した地域がある。仙台市若林区だ。

 若林区は大津波により、仙台市では最も多い339人もの犠牲者を出した。市は壊滅的な被害を受けた若林区荒浜など沿海部の1213haを、住宅の新増築ができない「災害危険区域」に指定した。防災対策を施しても東日本大震災級の津波には耐えられないとして、住民たちに地域外への転居を命じた。若林区の一部は市に「見捨てられた」のである。

 そんな若林区に2020年6月、仙台市若林区でスイートポテト専門店「仙台いも工房りるぽて」がオープンした。「りるぽて」をオープンしたのは、学生たちが立ち上げたボランティア団体「ReRoots」だ。「スイートポテトを通して、若林区に興味を持つきっかけになってほしい」と、ReRoots代表の広瀬剛史は語る。「りるぽて」開店のきっかけとなったのは、「おいもプロジェクト」。中学生以下の親子が地元農家の指導を受けながら、年3回集まってサツマイモの苗の植え付けや生育、収穫に取り組むアグリ(農業)ツーリズムだ。農業を体験しながら、地元の主婦たちが振る舞う自慢の農家料理に舌鼓を打つ。農村文化を体験できる催しとして、仙台市を中心に約100人が参加する人気イベントに育った。

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