第19回 ゴンドラの唄

黒澤明「この世のものとは思えないような声で歌ってくれ」

 若いIT系の経営者・奥藤君に招待されて「ミュージカル 生きる」を日生劇場で観たのは1年少し前、2020年晩秋のことだった。「黒澤明生誕110年記念」というサブタイトルがついていた。黒澤監督は私より30歳近く年上の大正9年生まれ。大学卒業後、映画会社の企画本部に2年ほど籍を置いたことのある私は、もちろん世界的な監督のことを知ってもいたし、デビュー作「姿三四郎」を始め、「天国と地獄」「七人の侍」「羅生門」「用心棒」など主要な作品はほとんど観ている。

ここから先は

2,101字
この記事のみ ¥ 200