切って落とされた国家権力vs デジタル経済権力の火蓋

巨大IT企業のパワーにおののく国家
容赦なく買収で競争相手を潰す

 世界的なデジタル経済権力対国家権力の新たな戦いが幕を開けた。

 米巨大IT企業GAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン・ドット・コム)の市場寡占に対し、欧州に続き米国の規制当局が昨年暮れ、相次いで反トラスト法違反で提訴に踏み切った。続いて中国当局も、電子商取引(EC)最大手のアリババ集団を独禁法違反の疑いで捜査に着手した。この一連の流れは、プラットフォーム(交流サイトのSNSなどIT基盤)を握り、市場支配を強める巨大IT企業のパワーに国家が脅威を覚え、一斉に規制に乗り出した現実を示す。

 昨年12月、米連邦取引委員会(FTC)と48州の司法長官が、フェイスブック(FB)を写真共有アプリ「インスタグラム」などの買収を例に「競争を制限し支配的な地位を築いた」として提訴。直後にコロラドなど38州・地域の司法長官がグーグルの検索事業に関し日本の独占禁止法に当たる反トラスト訴訟を起こし、事業分離などを求めた。米ネット広告市場では、シェア首位のグーグルが3割、2位のフェイスブックが2割と、両社で約半分のシェアを握る(図1)。

キャプチャ

 米議会下院反トラスト法小委員会が昨年10月、GAFAに関して発表した450ページに及ぶ調査報告書が独占事業の実態を明かしている。例えばフェイスブック・グループに対してはユーザー数が世界で月々31億4000万人に上るとし、「ソーシャルネットワーキング市場の独占的パワーを持つ」と断定した。他の2社、アップルとアマゾンの扱いは、バイデン新政権の手に委ねられた(図2)。

画像2


 反トラスト法の起源は、1890年に米国で制定されたシャーマン法に遡る。カルテルなど取引制限の共謀や独占の企てを防止する狙いで、後にその強化を図るクレイトン法、FTC法などが加わった複数の独禁法を指す。日本の独禁法のモデルともなった。米当局によるIT大手の提訴は、1998年の米マイクロソフト以来だ。長い間、独占に寛容だった米国の競争政策が大きく転換しだしたのだ。

ここから先は

4,381字
この記事のみ ¥ 200