元特捜検事の複眼(`21/11)

平山郁夫や東山魁夷らの石版画を巡る贋作事件
欲に嵌った摺り師のさもしい品性
それでも詐欺罪でなく著作権法違反で
摘発せざるを得なかった捜査機関の歯ぎしり

 石版画は摺り上げ枚数が限定された鑑定書なしの美術品、真贋の区別は作品力と販売元の信用力だけ。金欲しさ故に、持ち前の凄腕にPCスキャナーや画像編集ソフトまで駆使し、有名百貨店等も真作と誤信させる完璧な贋作を十年近く手掛ける。発覚の端緒は、贋作を見破った愛好家ではなく、長きにわたり多数枚を摺り上げて墓穴を掘ったこと。しかし、見落とせないのは「信じた私の負け、美術愛好家として名乗り出ることは恥ずかしい」とする被害者の詐欺捜査への非協力的な姿勢であろう。

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