「ものづくり技術の躓き」、過ぎたるは猶及ばざるが如し どこで切り替え、古い理論を越えていくか

半導体不足、最大の受託製造会社TSMCの今

 日本のルネサスの工場と台湾の幾つかの工場火災をきっかけに約2年、世界的に半導体の不足が続いている。新型コロナウイルス感染拡大に伴う世界的なサプライチェーンの乱れも重なり、世界の生産が影響を受けている。とりわけ自動車業界は打撃を受けている。ホンダは9月17日に、8月から9月の自動車の生産台数が当初計画の6割減になると発表。日産自動車も8月に米テネシー州の工場を2週間停止した。スズキも静岡県内の4工場の稼働を9月に計10日間止めた。トヨタ自動車も10月に国内全14工場を一時停止する。

 かつて日本もアメリカも半導体製造能力を十分持っていたが、設計開発と製造が分かれ、受託製造する専門会社が生まれた。その代表格が台湾TSMCで、世界の半導体生産の6割弱を握っている。

 TSMCは儲かるチップを製造する。最先端微細化ノードの半導体製造ラインは大量生産向きであり、アップルなどの「スマートフォン」にはマッチする。一方、自動車用は品質要求が高く、歩留まりが悪いので儲からない。しかも多種少量生産である。TSMCが大量生産できるチップに力を入れるのは当然だ。自動車用不足は、こうした構造問題を孕む。

ここから先は

5,218字
この記事のみ ¥ 200