“理想の母さん”メルケル首相が袋叩き ビットコインの下限・上限、VW「EV」の泣き所 “自己チュー”マッキンゼー「僕たちの失敗」

やらなかったことの数々
都市封鎖に募る苛立ち

 この人が日本の首相であったなら―幾多の日本国民がそう思ったのではないか。ドイツのメルケル首相である。昨年末、両手を打ち振り、感情あらわに訴えた。「心の底から申し訳なく思います。けれど1日590人もの命が失われている。そんな代償は、到底受け入れることができません」。原稿棒読みの極東の某首相との落差は埋めようがない。

 ところが、そのメルケル首相をドイツの有力誌シュピーゲルが2度にわたりボコボコに叩いている(2月8日、2月12日付)。「首相がミスを犯したというのではない。やろうとしなかったことがいかに多いか、だ」と。

 早くから叫ばれていた高齢者の養護施設対策は、議論ばかりで実行が伴わない。医療マスクの供給さえ、いまだに不十分。PCR検査も政府主導で迅速かつ広範に実施すべきなのに、市場に委ねられたまま。新型コロナの警報アプリに至っては、普及どころか、“冗談”のレベルに止まっている。揚げ句、折角、自国民が開発したmRNAワクチンを国内の工場で生産することもできていない――。

 我が菅首相もやれていないことばかりだが、同誌が怒るのは、やるべきことをやらず、対策が都市封鎖の一本槍であること。それで新型コロナを制圧できたのならともかく、ドイツは第2波に見舞われた。メルケル首相は(新型コロナを制圧するための)想像力も情熱も欠いている、と決めつけたのである。

 いや、情熱は失っていない。どころか、物理学者でもあるメルケル首相はほどんどの時間を新型コロナに費やしている。週末も新型コロナの研究論文や統計を熟読し、感染症学者たちに電話し、重症者用ベットの逼迫度合や人口10万人当りの感染症者数は空で言える。だから、国民へのアピールはこんな調子になる。「実効再生産数(1人の陽性者が感染させる人数)が0.7以下に下がらず、0.8〜0.85で推移している。変異株が活性化し、実効再生産数があと0.3ポイント上昇したら、(実効再生産数は)1を超え、感染者が幾何級数的に増える」。学者としての誠実さの表れだが、数字や専門用語の乱発に国民は当惑する。

 学者として新型コロナの怖さを熟知するが故に、メルケル首相は都市封鎖に固執する。学校の再開についても極めて慎重だ。昨秋には「児童は行き来する友だちをそれぞれ1人に限定すべき」と発言している。首相は一体、都市封鎖や学校閉鎖によって人と人のつながりが断たれる苦しさを理解しているのか、という国民の憤懣が募るのである。

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