NEW LEADER LIBRARY📚(`22/1)

戦争の勝敗を左右した石垣作り
穴太衆のもつ技術や組織を活写
若者の成長とライバル関係を紡ぐ

画像1

『塞王の楯』 今村翔吾(集英社2200円)

 戦国時代に穴太衆という石垣作りの職人集団が近江にいたということは、司馬遼太郎がどこかに書いていて、何となく気になっていた。日本はどこに行っても石垣が積んである。城郭はもとより人家の周り、畑、山道、里を流れる川岸、峠の枝道にも石垣があったりする。

 コンクリートが使われるようになるまで、土木工事は石垣が全てだったのだ。そこまでは誰でもわかることだが、石垣作りが戦争の勝敗を左右したとは考えつかなかった。

 本書はまさに戦において石垣が防御の要としてどのように活用されたのかを、城の攻防戦を通して活写した小説である。

 主人公は穴太衆の中でもトップ技術を誇る集団の次代を担う若者。この若者の成長物語を経糸とし、同じ近江の鉄砲作り集団、国友衆の後継者とのライバル対決を横糸として長大な物語が紡がれてゆく。

ここから先は

3,473字 / 5画像
この記事のみ ¥ 200