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「お試し改憲」の有力候補は緊急事態条項新設 焦点は議員任期の特例延長、基本的人権の保障との両立

参議院では「やっている感」だけ
憲法審など開く必要がないという政党も

 大きな自然災害や感染症の大流行、武力攻撃、大規模テロなど、不測の有事を「緊急事態」と呼ぶ。そのときにどう対応すべきか。

 憲法には緊急事態に関する条項は存在しない。「緊急」の2文字があるのは、第54条の2項と3項の「参議院の緊急集会」だけだ。

 そのため、実際に緊急事態に直面したときに、解決の方法がないとか、対応策が取れない場合があるという指摘は多い。それに対して、万全とはいえないにしても、災害対策基本法、自衛隊法、警察法、感染症法や新型インフルエンザ等対策特別措置法など、一般の法律で対応可能という異論も少なくない。

 予想される緊急事態の中で、「現状では解決が困難な憲法上の課題」といわれてきたのが、選挙の実施が不可能な状況で国会議員が任期満了を迎えるケースである。憲法では、国会議員の任期は、衆議院が4年で、解散の場合は期間前に終了(第45条)、参議院は6年で、3年ごとに半数改選(第46条)と定められていて、例外を認める規定はない。

 緊急事態で任期満了による衆議院議員の総選挙や参議院議員の通常選挙ができない場合を想定して、憲法改正によらずに、一般の法律で例外的に国会議員の任期の一時的延長を認める規定を設けることは可能かどうか。憲法で任期が固定されていて、一時的延長を認める法律は憲法に違反する。

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