女王薨去で「大英帝国」の歴史的な分水嶺 年金システム崩壊寸前、ドイツ経済も急ブレーキ 米国を蝕む犯罪都市と正社員たちの「静かなる引退」

火の車の王室財政
英連邦に王制離れ

 土台、比べる方が間違っている。無残なコントラストだ。エリザベス2世の「国葬」には世界中の王族・首脳が馳せ参じた。安倍元首相の「国葬」に訪日したG7首脳は0。

 「志」の違いである。元首相の「国葬」が現首相の政治的打算の産物であることは見透かされていた。対して、エリザベス2世は自らの「国葬」に英国王制と大英連邦の存続を賭けていた。王制と連邦への忠誠心を高めるための、荘厳にして華麗な「国葬」だった。女王は生前、いかに「国葬」が挙行されるべきか、こと細かに指示していたとされる。

 裏を返せば、英国王制が大きな危機に直面していることでもある。英国王は名目上は、世界で最もリッチな1人である。ロンドン中央の繁華街、リージェント・ストリートやセント・ジェームズ通りを所有し、資産総額は156億ポンド(2.6兆円)。海岸から12マイル以内の海床(海底)も国王のものである。近年、洋上風力発電の発展で海岸線に近い海床の価値はうなぎ登りとなっている。

 ところが、これらの資産は名目上、国王に属してはいるが、実際には、独立法人の「クラウン・エステート」が管理・運営し、そこから上がる収益の一部が「王室の下賜金」(sovereign grant)として王室に配分される。

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