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国家の信用と社会保障を重視し財政再建路線「民主党最後の首相」野田佳彦、覚悟の負け戦

「5年で返り咲き」どころか2党分裂状態
「打ちのめされた」12年12月の衆院選

 2022年10月25日、野田佳彦元首相が衆議院本会議で、安倍晋三元首相の追悼演説を行った。両者は10年前の12年12月26日の政権交代で首相の座をバトンタッチした間柄である。

 演説で、野田は前首相として立ち会った皇居での親任式の2人だけの場面を回顧した。

 「あなたは私のすぐ隣に歩み寄り、『お疲れ様でした』と明るい声で話しかけてこられたのです。(中略)『自分は5年で返り咲きました。あなたにも、いずれそういう日がやって来ますよ』 温かい言葉を次々と口にしながら、総選挙の敗北に打ちのめされたままの私をひたすら慰め、励まそうとしてくれるのです」

 安倍は以後、7年8カ月在任して史上最長政権を築いた。一方の野田は、「5年で返り咲き」どころか、旧民主党勢力は10年後の今も野党のまま2党分裂状態で低迷が続く。明暗を分けたのは、野田が「打ちのめされた」と漏らした12年12月の衆院選であった。

 09年9月に政権交代を実現した民主党は、10年7月の参院選で衆参ねじれ再現を許す敗北を喫した。野田はその1年2カ月後の11年9月に民主党政権の3代目の首相となった。

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