「歴史は繰り返す」を地で行くような「既視感」人はいつのまにか、ちがう野原を歩いている

「君たちは世界を危機にさらしているのだ」
「まさか」がにわかに「ありえること」になった

 作家・太宰治は戦前の短編「東京八景」でこう書いている。

 「人はいつのまにか、ちがう野原を歩いている」

 人はしばしば、それと気づかないうちに人生の大きな転機を迎え、いつしか新たな境地に立っている。1930年代末、太宰はそれまでの薬物中毒や心中未遂騒ぎなど、退廃を極めた生活を改め、30歳を前にして本気で創作に打ち込んだ。夜食の握り飯を用意した。

 この時期、「走れメロス」や「女生徒」など、見違えるようにみずみずしい秀作を多く書いている。日中戦争は泥沼化し、太平洋戦争が近づいていたころである。

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