「城の貸し切り」で富裕層観光客を取り込む 愛媛県大洲市キタ・マネジメントの挑戦

「城泊」は欧州では珍しくないのに・・
当時の工法で木造天守閣を正確に復元

 気分は「一国一城の主」。愛媛県大洲市の大洲城天守閣を利用した「城泊」による地域おこしが注目されている。同市は人口約4万1200人の愛媛県南部に位置する城下町で、「伊予の小京都」と呼ばれる美しい街だ。1960年には人口が7万2400人を数えたが、過疎化が進んでいる。とりわけ松下寿電子工業(現・PHCホールディングス)が、リーマン・ショックで2010年に撤退すると人口減少に拍車がかかり、急速に活気が失われた。それにしても、なぜ「城泊」なのか?

 お城に泊まる「城泊」は欧州では珍しくないが、日本では例がなかった。明治維新後の廃城や天災、火災、太平洋戦争での空襲などで、天守閣の多くが消えたという事情もあった。だが、そもそも天守閣は非常時の最終指揮所であり、江戸時代には物置として使われている。城主たちの生活の場ではなかったため、西洋の城のようにホテルとして再利用しにくい建物だった。

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